日本に初めて石鹸が入ってきたのは、織田信長の時代(16世紀頃)でした。その頃はまだ一般的に普及しておらず、一般庶民が石鹸を使うようになったのは明治以降といわれています。
江戸時代にも石鹸は存在していましたが、かなりの高級品で、主に薬品として医療用に使われていたといわれています。
そして1873年、初めて国産の石鹸が売り出されます。合成洗剤が売り出されたのは第二次世界大戦後です。
石鹸や合成洗剤がなかった時代、身体や衣類をどのようにしてあらっていたのでしょうか。
目次
植物の灰汁(アク)は使える!
身体の洗浄は川や泉での沐浴、衣類ははたく、踏むなどの原始的な洗浄方法から始まりましたが、やがて人々は植物の灰汁(アク)や米ぬかが洗浄に役立つことを知ります。
植物で身体も衣類も洗っていた
人々は、植物の灰汁(アク)の他に、ムクロジの果皮ツバキの実の油かすなど、身体や衣類をよりきれいに洗浄してくれる天然植物も見つけます。
現在は、各家庭にお風呂があるのが一般的ですが、江戸時代にはもちろんそんなものはありません。先に記述したように、明治以降になってからしか石鹸が使われなかったのですから、それまでは自然に存在する植物で身体の洗浄から掃除まで行っていたのでしょう。
江戸時代の女性だって美を求める!
江戸美人の必須は美白!美しい肌を求めるのは今も昔も同じ。では、クレンジングや石鹸のない時代に、どのようにして美白・美肌を目指したのでしょう。
糠(ぬか)は美白・美肌の必須アイテム
洗顔時の必須アイテムとして、江戸時代の人々は糠(ぬか)を使用していました。糠とは、玄米を精米する時にとれるものです。
糠を袋に入れ(糠袋と呼ばれていました)、ぬるま湯に浸して絞り、顔をなでるように優しく洗っていたそうです。
糠は、ビタミンやミネラルなど、栄養素がたくさん入っており、美容効果がある上に、紫外線を防ぐ効果もあります。現在も、糠を取り入れたボディケア用品やコスメなどが販売されているのですから、効果は確かなものといえるでしょう。
うどん粉と海藻フノリブレンドでつや髪へ
江戸時代、女性が髪の毛を洗うのはなんと月に1~2回程度だったそうです。理由は、3つ。
・当時は水が貴重だったので、美容のためにたくさん使うことができなかった
・ドライヤーがなかったので、髪を洗うときは天気の良い日でないと大変だった
・江戸時代の女性は、髪の毛が長かったので洗髪にも時間がかかった
なかなか髪の毛を洗うことができない中、つや髪にしたい女性たちは「うどん粉」と「海藻のフノリ」が効果アリ!ということを見つけます。
作り方はシンプル。ドロドロにしたうどん粉とフノリを混ぜ合わせ、髪によくすりこみ、くしですきながら丁寧にお湯で流します。他にも、ツバキの油粕なども使われたそうです。ツバキといえば、現代でもお馴染みですね。
洗濯洗剤はオーガニック
洗濯は、天然の植物を使っていたことをご紹介しましたが、ムクロジという実の果皮が石鹸らしい働きをしてくれるのです。
泡立つ果実の果皮?
このムクロジの実の果皮をお湯に入れて煮詰めると、石鹸のようにぶくぶくと泡立ってきます。
実は、ムクロジには「サポニン」という天然の界面活性剤が含まれていることがわかっており、この成分が汚れを落とすのです。ムクロジが洗浄に使えると見つけた人はいったい誰なのでしょうか…。昔の人は「カン」が冴えていたのですね。
江戸時代にシャボン玉があった?!
石鹸がないのにシャボン玉…、これはムクロジの予感!
江戸時代末期に描かれた作品の中に、子供たちがシャボン玉で遊んでいる様子があります。なんと、シャボン玉の行商人もいたそうで、江戸では「玉屋~玉屋~」と呼び売り歩いていました。(「玉屋~」は花火のときだけではなかったのですね!)
シャボン液は、ムクロジの果皮や芋がらを焼いたものを混ぜ、水溶液にしたものでした。ストローは?というと、竹の細い管や葦(あし)などを使っていました。使い方は現在と同じです。現在のシャボン玉のように、5色にきらめくシャボン玉ができます。
まとめ
石鹸がなくても、自然のものでも物をきれいに洗ったり、身体を美しくしたりする方法はあったのですね。
コスメや食べ物など、オーガニック商品が人気である現在、江戸時代の人たちの使っていたものはお手本となりそうです。