牛脂は多くのスーパーなどで「ただ」でもらえます。
最安値のオイルと言っていいでしょう。
大変手に入りやすいため、食用として使ったことがあるかたも多いのではないでしょうか。
北欧では、ラード、バターと並んで家庭でも手に入りやすかったため、牛脂が伝統的に手作り石けんの材料として使われてきた歴史があります。
工業用の石けんの材料としても使われてきた牛脂、それを手作り石けんの材料として使ったときの効果と注意点について解説しましょう。
目次
牛脂の効果
牛脂は地中海のマルセイユ石けんやカスティール石けんと並ぶ、イギリスのウィンザー石けんの材料として用いられ、そのままアメリカに渡ったオイルです。
牛脂の成分はオレイン酸が41%、ステアリン酸が18%、パルミチン酸が27%といった構成になっています。
手作り石けんの材料としては、硬さが出ること、そして何より経済的であることが非常に大きなメリットと言えましょう。
硬さの原因はその融点の低さにあります。
牛脂は45度~50度の温度で固まりますので、石けんの材料に加えると、型入れまでの時間が非常に短くなります。
また、伝統的に非常に安価であることも牛脂のメリットの一つです。
牛脂のデメリット
牛脂を手作り石けんの材料として使ったときのデメリットは、泡立ちが悪いこと、そして皮膚のトラブルの原因になることが挙げられます。
牛脂の融点は40~45度ということは述べましたが、この温度、体温よりかなり高い温度です。
つまり、体温では溶けずに皮膚の上に残るオイルになります。
これが、人によっては皮脂腺や汗腺の活動の妨げとなり、皮膚のトラブルの原因となると言われています。
牛脂はラードやバターよりも使用感が重いと言われていますが、その原因もこの溶けにくさにあると言えるでしょう。
また、泡立ちを良くする成分はあまり含まれていませんので、ココナッツオイルなどの泡立ちを良くする成分を一緒に入れる必要があります。
牛脂の鹸化価
牛脂の鹸化価は、苛性ソーダで140、苛性カリで196です。
どのような場面で使うと効果的か
イギリスやアメリカで古くから石けんの材料として使われてきた牛脂。
オリーブオイルやホホバオイルなど、体に良いと言われるオイルが現在の日本にはたくさんあります。
そんな中、牛脂で手作り石けんを作る意義はあまりありません。
かつてはその安さと固形化の力が石けんの材料として重宝されましたが、ココナッツオイルなど石けんを硬くする良質なオイルが簡単に手に入る状況で、敢えて牛脂を選ぶ必要もなくなりました。
肌荒れの原因としても懸念される中、手作り石けんの材料として積極的に使用する必要はないと言えるオイルでしょう。
スーパーで簡単に手に入る、節約用オイルの代表格、牛脂
日本ではスーパーにてタダでもらえるため、テレビで人気の「節約生活」などには頻繁に登場する牛脂。
とにかく経済的で、牛脂80%、ココナッツオイル20%という配合が工業用の石けんの標準になっていたほどです。
しかし、今では市販の石けんも安く手に入る時代です。牛脂がただであっても、苛性ソーダや他の器具、材料がタダになるわけではありません。
石けんの歴史的な背景を認識する一助となるのが、この牛脂の現在の役割なのかもしれません。